存在を存在たらしめるモノ
あらゆるものは、
「存在するもの」と「存在しないもの」に分類することができます。
以下にそれぞれの例をいくつか示します。
「存在するもの」の例:
パン、時計、スニーカー、先割れスプーン、
醤油の味、戦争、吸引力の変わらない掃除機
「存在しないもの」の例:
ペガサス、ドラゴン、一つ目小僧、マカロニ入道、
生まれた場所によって差別する正当性、セ行変格活用、本当のお母さん
さて、「存在するもの」と「存在しないもの」の分類は、
いったい何者によってなされているのでしょうか?
以前までの私は、それは「総理大臣」だと思っていました。
「日本でいちばん偉いのは『総理大臣』である」と
頭の良さそうな中学生に教えてもらったことがあるからです。
しかし、それは間違っていた。
「存在するもの」と「存在しないもの」を分類しているのは、
「存在ゴリラ」の仕業だったのです。
これはとても危うい状態であるといえます。
存在ゴリラの手にかかれば、「二塁手」を存在しなくすることや、
「レスキューそば」(絆創膏の入ったそば)を存在させることまで、
お手の物だからです。
この危険性に気付いている人は、私以外には誰もいませんでした。
存在ゴリラは引っ込み思案で、他人に知られることを極度に嫌がるのです。
それでも私は、存在ゴリラと直接会って交渉しようと試みました。
しかし、それは叶わなかった。
存在ゴリラは、私に発見された次の瞬間、
みずからを「存在しないもの」に分類してしまったのでした。