私は普段田園地帯を通る道を通勤に使っています。
石川県南部だと今の時期は概ね田植えが終わり、水が張られた水田風景が広がっているのですが、
一帯には麦を育てられている農家の方も多くおりまして、この時期はちょうど収穫の直前で、
黄金色に綺麗に実った麦畑の姿もちらほら見ることができます。
その麦畑を見ると、毎年思い出す出来事があります。
高校生の頃の話ですが、国語の授業では毎回開始時に五分ぐらいの漢字テストが行われていました。
学校指定の漢字問題集の中から教師が10問読み上げて、その答えを書く形式で、
その問題集をちゃんと予習していれば満点は簡単に取れました。
ただ出題される漢字自体がそれほど難しくなかったので、予習をサボったり、
腕試し的にわざと予習せずにテストに臨む生徒も半分ぐらいいました。私もその一人だったわけですが。
そんなある日の漢字テストで、とある問題が出されました。
「畑一面に広がる美しいバクスイ」
このバクスイの漢字を書くわけですが、はてバクスイとはなんぞや?
当時は本の虫だった私も初めて聞く言葉で、全く見当もつきません。
周りを見ると私と同じように予習してない組は全員困り果てており、逆に予習組は全員得意満面の顔。
これはダメだ…と思った瞬間に出題していた国語教師がポツリと呟きました。
「麦の穂! これ難しいよなあ…」
普段からちょっと変わった先生ではありましたが、ともかく大半の生徒は正解してしまいました。
正直この漢字テストでどんな漢字が出題されていたかはほとんど覚えていないのですが、
おかげさまで麦穂(バクスイ)という言葉だけは未だに忘れたことはありません。